個性化

2026年09月15日 23:16

個性化

以前、ユングが思想化されたボディ・マインド・スピリットの統合や、個性化の道を辿る上で自我肥大が生じ得るお話を書きました。

ユングが臨床で目指したものは、クライエントお一人お一人の「個性化」、「心の全体性の統合、回復」です。
それぞれの物語や人生は独自性に富んでいることを前提に、自分自身を深く知り自身の可能性を実現していくことを、ユングは個性化=自己実現と呼びました。

現代精神科治療でも言えることですが、治療者は例えば「患者の妄想の内容」の逐一を重視することはありません。ユングの時代もまたそうでした。
現代の統合失調症治療ではドーパミン仮説に基づいた薬物療法が原則であり、「病的妄想が生じている」事が確認できれば診断、治療が行えますし、下手な対応を行えば症状悪化に繋がりかねません。
ユングの技法、アクティブ・イマジネーションは、無意識への扉を敢えて開ける方法です。

「既に無意識のイメージが制御不能なほど病的に湧出している状態」は、心理学的にも統合失調症や急性精神病領域にあるとされます。
「自律的に湧出しすぎている患者(DMNの暴走状態)」に対するアクティブ・イマジネーションの実施は、ユングご自身が臨床や研究を重ねた結果、原則禁忌とされました。

しかし、ユングは患者が語る「幻覚」などを拾い、神話と参照しその内容に合致を見、またご自身の経験から無意識の根底に息衝いている人類共通普遍の「象徴」や「神話創造力」に気付かれたのでした🙂

19世紀の西欧列強は各国が軍事同盟を結び、互いの勢力の均衡を維持していました。
1914年、第一次世界大戦勃発前には各国の軍備拡張競争があり、大戦前数年間は文化や芸樹分野でも終末論的なイメージで覆われることとなります。

ドイツ表現主義の画家、ワシリー・カンディンスキーは来たるべき世界の破滅について書き、詩人でもあるルートヴィッヒ・マイトナーは、破壊された都市や騒乱を描き、終末論的光景で知られる一連の作品を制作されました。
アメリカの霊媒レオノラ・パイパーが、来たるべき世紀において世界のさまざまな地域で恐ろしい戦争が起き、それにより世界は浄化され、降霊術の真理が明らかにされるだろうと予言しました。

ユングもまた、この大戦直前の1913年、旅路の中で覚醒しながらあるヴィジョンをみました。
ヨーロッパが破滅的な洪水によって荒野と化すという幻覚で、2週間後に同じ幻覚体験をされています🏔
そして彼の内なる声は「ファンタジー」は完全に現実のものとなる、と伝えました。
その後も欧州が血の海となるのを見、自宅が亡霊で溢れる感覚等も体験されました。

この体験後、ユングはご自身が精神病となるのではないかと恐れました。フロイトとの決別後の、ご自身のこの自我的危機を「方向喪失の状態」と呼ばれています。
学術論文が読めなくなり、教師として務めていたチューリヒ大学も辞められ、その状態は3年程続いたとされます。

ユングはその精神的危機状態を自己分析によって乗り切られました。その結果、ご自身の心理学を掴み取り復活されます。
そしてその体験の本質を、「無意識との対決」と捉えられました。精神病的体験を通過される際に生じた神話的深層との対決は、彼の分析心理学として結実することとなりました。

この時の幻覚との対峙は記録され、無意識的対話としてユング著「赤の書」に詳細に描かれています📚
ユングが復活を可能にしたポイントも、また取り上げたく思います😊

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