ユングと時代

2026年09月12日 23:27

ユングと時代

フロイトやユングの功績を生んだ19世紀から20世紀にかけての世界潮流は、精神医学においても大きな進歩をみた時代でした。

彼らの時代の少し前、17世紀の欧米はイギリスに始まる東インド会社の興隆が見られ、近現代まで続いた世界の大規模な植民地化、支配が本格化した時代です。

東インド会社は史上初の株式会社でもあり、国家に許可を得た民営会社であり、アジア地域との貿易独占権を持つ特許会社でした。
イギリスに続きオランダ、フランス、デンマーク、スウェーデンでも設立されます。かつてのシルクロードを通じた交易や、ポルトガルやスペインを凌ぐ形で貿易利益独占が行われました。

各地には商館が置かれ、香辛料や綿織物、絹織物、陶磁器や茶などのアジアの特産品が西欧に運ばれました。イギリスの紅茶文化はここに起源を持ちますね🙂🫖
日本でも幕府から唯一、交易を許可されたのがオランダ東インド会社でした🇳🇱

この頃の手工業の拡大は第一次産業革命と呼ばれ、原料調達地、また市場として植民地は大きな支えとなっていました。

当時の西洋社会では「貨幣こそ富、富こそ国力」という重商主義のもと教育がなされていました。自国の富の蓄積が優先される独占貿易が行われ、同時に利益拡大と需要確保のため、各会社は軍事力や政治権力を強めていきました。
市場のフェアネスを重視したアダム・スミスは、当時の東インド会社のような特権による独占状態を「国富論」で批判しました。そして自由貿易を求める声が強まり、東インド会社は解散していきました。

19世紀には第二次産業革命が興り、各国では帝国主義傾向が強まっていきます。19世紀の日本では明治維新も起き、西洋文明の本格的な流入となりました。西洋でも物質文化に加え、宗教観、霊性、宇宙観、自己理解の方法などの東洋精神文化も知られることとなりました。東洋思想は欧米で再解釈され、時には流行や理論の材料にもなりました🧘‍♀

心霊主義のような潮流では、未知の世界や死後の存在への関心が高まり、その中で仏教、ヒンドゥー教、道教、神秘思想などが、既存の西洋的な枠組みを揺さぶる要素として受け取られます。
またチャールズ・ダーウィンの「種の起源」(1859出版)は既存の宗教思想と科学に衝撃を与え、フロイトは当時の道徳的確信に疑問を抱き、精神医学は「科学的臨床医学」への脱皮をみるような革新的な時代でした。

それ以前の精神病者への対処は、現代の人権意識から捉えると「不条理な監禁・保護」が通常であり、精神障害の分類もされていませんでした。
ドイツの精神科医エミール・クレペリン(1856〜1926)は早発性痴呆(統合失調症)と躁鬱病(双極性障害)の2大分類を行います。日本の精神科医、斎藤茂吉はクレペリンの講演を聴きに行かれました。(握手を断られ、無念の思いを歌にされた歌人でもあります🥲)

オイゲン・ブロイラー(1857〜1939)は精神分析の祖であり、ユングに精神病の研究、自由語連想法、実験理論を紹介し、無意識の世界へ誘った師です。
学術界で異端視されていたフロイトを擁護し、ユングをフロイトの元へ送るなど、洞察力やお人柄が伺えるようなエピソードがあります。
クレペリンが提唱した「早発性痴呆」を「スキゾフレニア(精神の分裂)」の概念へと捉え直し、以後の診断名として現代まで引き継がれるなど大きな功績を残されました。

このような中、プロテスタント牧師である父、教会に強い繋がりを持つ母の下にユングは生まれ育ち、伝統と近代性の狭間にありながら、夢中になった精神医学の世界へと進まれたのでした。

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